「無の個性派」チューハイができるまで。

高炭酸の強い刺激、アルコール9%の飲みごたえ。すっきりとした味わいに加えて、 「全く甘くない」という特長を兼ね備えた異色の無糖チューハイ〈ウィルキンソン・ハードナイン〉。 追求したのは本当においしい「ない味」をつくり上げるということでした。

話を聞いた人

  • アサヒビール(株)
    酒類開発研究所

    竹内 曜さん

従来のイメージを覆す『全く甘くないチューハイ』

果汁のみずみずしさやふくよかな甘さを、飲みやすいアルコール度数で楽しむイメージのあるチューハイ。一方で近年は、すっきりとした味わいで飲みごたえのある、高アルコールのタイプの需要も高まっています。

今回、竹内さんたちは新しいチューハイ開発に際し、改めて「チューハイとは何か」という原点に立ち返り、コンセプトを模索していきました。

「チューハイは、『お酒の味わいそのもの』と『炭酸の刺激』を『食事と一緒に』楽しむというのがポイントなのでは、という考えに至りました。そこからベースのお酒と炭酸にこだわりぬき、糖類・甘味料さらに果汁も使用しないという、実に硬派なチューハイのアイデアに辿り着いたのです。

特に注目したのが食事との相性。食事のお供には無糖のお茶やミネラルウォーターが根強く支持されていますが、近年は炭酸水も存在感を増してきています。炭酸水は、食事の味わいを邪魔しないうえ、シュワッとした口当たりと喉越しには、食事の脂分をすっきり洗い流すような爽快感もあります。そこで新しいチューハイには、磨き抜かれた水の品質と強い刺激が特長の炭酸水〈ウィルキンソン タンサン〉を用いることに。〈ウィルキンソン〉ブランドが持つ世界観を活かしながら、『全く甘くないチューハイ』を目指すことにしたのです」と竹内さんは開発当時を振り返ります。

これは甘さをプラスするという製法が確立された缶チューハイ開発においては、画期的な試みでした。

〈無糖ドライ〉のほか、果皮の酸味・苦味を残しながら全く甘みのない〈無糖レモン〉、刺激と爽快感がプラスされた飲みごたえのあるドライな〈 無糖ジンジャ〉がラインアップ。

無味でありながら、おいしい『無の中に個性を表現』

目指したのは、甘さも果汁もない、いわゆる「無味」の中で、お酒本来のおいしさを楽しめるチューハイ。言い換えれば様々な要素を削ぎ落とし、さらに『無の中に個性を出す』という開発作業です。

砂糖や果汁でおいしさをつくる、従来のチューハイ開発の手法が通用しない、革新的な挑戦でした。

「開発期間の大半を費やしたのが、ベースとなるお酒そのもののおいしさを追求することでした。メインとなる味がない中で要となるのは、飲んだ時の香りと、飲み込んだ時に鼻に抜ける香り。最初から最後の一口までそれぞれの段階で感じる香りに抑揚をつけることで、飲み飽きないおいしさを実現できると考えました。

そして編み出したのがウオッカとジン、そして独自の製法でつくりだしたフルーツスピリッツ*の三種を使用する『トリプルスピリッツ製法』。クリアで飲みやすいウオッカ、ふわっとボタニカルな香りが鼻に抜けるジン、柑橘の香りのみを抽出したフルーツスピリッツをそれぞれ厳選し、ブレンドすることで、『無味』の印象を損なうことなく、味わいに個性を持たせることができました」。

*フルーツスピリッツ:果皮をアルコールに浸漬させた浸漬酒を、独自の技術により減圧蒸留した蒸留酒。果実の甘さを残さずに、柑橘の香りのみを抽出。

絶妙なバランスを導くために繰り返されたマイナスの作業

鍵となった「トリプルスピリッツ製法」ですが、単に三種類のスピリッツを組み合わせるだけでは、「無の中の個性」を実現することはできません。個性や抑揚をもたらす要素のうちわずか一つでも主張が強すぎると、「無」の印象が損なわれてしまうからです。

個性と抑揚、そして無を共存させる答えは、スピリッツの配合バランスにありました。

「各スピリッツのベストな配合バランスを探すプロセスは、とても繊細な作業でした。開発中はいつも心身ともに自分を整え、感覚を研ぎ澄ましてから開発に臨んでいました。

開発段階では、ほんの一滴にも満たないスピリッツが味わいに大きく影響を及ぼすため、マイクロ単位の引き算を何度も繰り返しました。最適な配合を見つけたと思っても、炭酸水を混合したり、より刺激を高める香料などを追加すると、その絶妙なバランスが崩れ、配合検討まで戻ることもしばしばありました」と竹内さんが語るように、行ったり来たりの緻密な模索を繰り返すことで、お酒本来のおいしさを楽しむための最高のバランスを見出し、〈ウィルキンソン・ハードナイン〉は完成に至ったのです。

『マイナス志向』が生んだチューハイの新たなる可能性

甘さや果汁といった要素を削ぎ落とすことで見えてきた、チューハイの新しい姿。〈ウィルキンソン・ハードナイン〉の知見を活かして新たに登場したのが、果実の味わいがありながらもすっきりとした味が楽しめる〈ウィルキンソン・ドライセブン〉です。

お酒は好きだけどあまり強くないという方に向けて、アルコール度数を抑えわずかに甘みを加えることで、炭酸とアルコールによる飲みごたえと同時に、飲みやすさを実現しています。甘さを控えながらも、口当たりがよくゴクゴク飲めて、しかも満足感があるこの〈ウィルキンソン・ドライセブン〉もまた、ベースとなるスピリッツの絶妙な配合技術があってこそ実現できた繊細な味わいが魅力。

究極まで削ぎ落とすことで到達した〈ウィルキンソン・ハードナイン〉。開発過程で見出された『マイナス志向』は、一つの商品だけにとどまらず、チューハイの新たな可能性を切り開いたのです。

一緒に食べておいしいメニュー

こってりした料理や油を使ったフライなどと相性抜群。炭酸が口の中をさっぱりとさせてくれます。

白身魚のフライ タルタルソースがけ
ガリバタステーキ