【研究者が語るミライ】佐藤 英明 さん

“うまい”の秘密を科学で解き明かし、新たなおいしさをつくり出す研究に日々励む研究者たち。ミライの“うまい”を探求する研究者だからこそ、見えるミライがある。

話を聞いた人

  • アサヒクオリティーアンドイノベーションズ(株)
    プロセス開発研究所

    佐藤 英明さん

今回は、「CAE(Computer Aided Engineering)」というシミュレーション解析技術を駆使し、研究所や開発現場での試験工数削減に貢献するアサヒクオリティーアンドイノベーションズの佐藤英明さんにミライを語ってもらいました。

研究者が語るミライ|佐藤 英明 さん

フタをあけた時に香りをじっくりと楽しむことができる、ウイスキー専用のグラス〈香りに出逢うグラス〉。開発者の佐藤さんの「ウイスキーをよりおいしく飲めるグラスを開発したい」という想いから生まれたこのグラスは、非常に精密なシミュレーション技術「CAE」を用いることで、最大限に香りを楽しむことのできる形状を導き出しました。

CAEとは、コンピュータを用いて設計段階から様々なシミュレーションを行い、高精度、高品質な商品を開発するための工学的解析技術。コンピュータの膨大な計算能力を活かすことで、普通は目で捉えることのできない現象を模擬し、人間ができる試行錯誤以上の検証ができることが大きな利点です。これにより、かつては多くの人力と時間をかけていた試作開発や実証実験を大幅にマイナスすることができます。

佐藤さんはまず、フタを開けた瞬間に内部の香りがどのような挙動を見せるかを特殊な赤外線カメラで可視化。さらに映像から明らかになった情報をもとに、CAEでグラスの形状と香りの挙動のモデルを作成しました。このシミュレーションから、香りをたっぷりと楽しむことができ、ウイスキーをおいしく飲むために最適なグラスの形状を導き出したのです。

〈香りに出逢うグラス〉

「食品業界では工学を用いた開発・研究事例が、とても少ないんです。活用できればAIとも親和性が高いですから、ますます幅広く正確な検証を短時間で実現できます」

そう話す佐藤さんが目指すのは、工学による食品・飲料業界の発展。
「CAEはあくまで解析技術の一つです。何を切り口に最適解を導き出すかは、研究者の発想にかかっています。生物学など全く違う分野と工学的な技術を組み合わせることでも、さらに新しいイノベーションを生み出せると思っています。開発者の想いやバックグラウンドを活かして技術を駆使できれば、期待を超えるような『おいしさ』を実現する方法は無限に広がるはずです」。