○※1 T. Takeda et al. Prevalence of premenstrual syndrome and premenstrual dysphoric disorder in Japanese women, Archives of Women’s Mental Health, 9 (4) (2006), pp. 209-212,
10.1007/s00737-006-0137-9
○※2 D. Sawada et al. Daily intake of Lactobacillus gasseri CP2305 improves mental, physical, and sleep quality among Japanese medical students enrolled in a cadaver dissection course
, Journal of Functional Foods, 31 (2017), pp. 188-197, 10.1016/j.jff.2017.01.042
○※3 公益社団法人 日本産科婦人科学会 月経前症候群http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=13
「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」が女性の月経前におけるゆううつな気分や不安感を緩和することを解明
~こころとからだの健康維持に、腸から支えるパラプロバイオティクス~
女性は、周期的なホルモン変動により、ココロとカラダの連携が揺らぎやすくなってしまうことがあると考えられています。「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」はヒトへの安全性が確認されている乳酸菌の一種であり、腸内細菌と腸とココロの共感に着目して研究を進めて参りました。今回、月経前の精神的に不安定な時期においても、「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」の効果が実証されたことにより、日常を前向きにアプローチできる生活習慣の1つとして、より多くの方に知っていただきたいとともに、今後も、ヒトのココロと共生微生物との相互理解の研究を進めてまいります。
女性が月経前にどのような症状を感じるかは、個人差が大きく、そのメカニズムもまだ詳しくは分かっていません。今回の研究で、「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」の摂取により、月経前の憂鬱な気分や不安感などの症状が改善されることが分かったことで、そうした心理的症状を腸から改善していくアプローチの可能性が示されました。女性ホルモンの変動をはじめ、人にはもともと体の恒常性を保つ調整システムが備わっていますが、そこには「忘れられた臓器」とも呼ばれる腸内細菌叢の働きも関係していることが分かってきています。「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」のように、腸から体に働きかける健康素材が活用されることで、腸を通して自分の心身の健康全体にアプローチしていこう、という考え方が浸透していくことを期待しています。
長年、アサヒグループで研究をしてきた「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」は、腸に作用し、脳腸相関(*5)を介して脳に働きかけ、精神ストレスを緩和することが分かっていました(※2)。女性ホルモンの分泌は脳から指令で調節されており、脳腸相関を介する「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」が月経前の精神的な症状の改善にも効果がある可能性を考え、アサヒグループは徳島大学と共同で、女性を対象に研究を行いました。「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」の摂取による影響について評価したところ、女性ホルモンの分泌量に作用し、月経前の精神面における症状を改善することが明らかとなりました。今回の研究成果は、女性の日常におけるQOLの改善へ貢献できる可能性が考えられ、今後のさらなる研究が期待されます。
■「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」摂取群とプラセボ群に、質問票を用いて、12項目の月経前症状の主な症状(ゆううつな気分、不安感、気分変動、いらだち、無気力、集中力の欠如、疲れやすさ、過食、眠気、不眠、取り乱し、身体面)の状態・程度を尋ねました。その結果、ゆううつな気分、不安感、無気力、疲れやすさ、眠気の項目において、「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」摂取群はプラセボ群と比較して有意にスコアが低下しました。このことから、「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」は、月経前の症状のうち、精神的な症状の改善に効果があることが確認されました。
■一方、身体面のスコアについては、プラセボ群は低下したのに対し、「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」摂取群では変化がないという結果も得られました。
アサヒグループが保有する多くの乳酸菌の中から、“脳腸相関”(*5)の仕組みを介してはたらきかける可能性が期待されて選抜された菌株です。
整腸作用やストレス緩和、睡眠の質を高める作用が報告されています。
*2 パラプロバイオティクス
加熱処理などにより殺菌した死菌体、もしくは菌体成分であり、生体機能を改善する機能があるもの。
*3 エストロゲン・エストラジオール
エストロゲン:女性ホルモンの一つ。月経から排卵の間に分泌量が増加し、子宮に作用することで、受精卵のベッドとなる子宮内膜を厚くする働きがあります。
エストラジオール:エストロゲンの1種であり、閉経前に卵巣でつくられる主要なエストロゲンです。
*4プロゲステロン
女性ホルモンの一つ。排卵から次の月経までの間に分泌量が増加し、基礎体温を上げ、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を安定させる働きがあります。
*5 脳腸相関
腸と脳は互いに情報伝達を行い、生体機能を保っています。この仕組みのことを“脳腸相関”といいます