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感性工学の考え方を導入し、新しい飲み口の「うまくち缶」を開発

感性工学の考え方を導入して、新しく開発した「うまくち缶」は、お客様の“飲みやすさ”、“注ぎやすさ”を徹底的に追求し、1000人規模の消費者調査を実施して最高の結果となった飲み口を採用いたしました。新しい飲み口は従来品よりも幅広く正円に近い形状になり、注ぎ出しの流量が従来品に比べ2割程度多くなっていますので、「アサヒスーパードライ」をお飲みいただくのには最適な飲み口となっています。

これまでお客様の飲用時の“飲む時品質”の向上を目指し、全社的鮮度活動であるフレッシュマネジメントなど様々な取り組みを推進してきました。

このような取り組みの一環として、缶から直接飲用されるお客様が増加傾向にある中で、「アサヒスーパードライ」をもっともっとおいしく飲んでいただきたいという思いから、従来とは全く違う切り口での缶容器開発を開始しました。

全く新しい切り口とは、“感性工学”の考え方を導入し、お客様が感覚的に持っている“飲みやすさ”“注ぎやすさ”に関する感性イメージと容器の物理的特性との相関関係を 科学的に解析し、容器開発に結び付けていくものです。

“感性工学”とは、人間が抱く商品に対する感性(イメージ・フィーリング)と商品の物理的特性との相関関係を明らかにし、その結果を工学的な商品設計に落とし込む手法です。

アサヒビール(株)は、容器開発におけるお客様満足度の向上を目指して、2001年から“感性工学”の第一人者である早稲田大学理工学部、棟近雅彦(むねちか まさひこ)教授と、容器・外装開発に関する共同研究を進めてきました。

商品技術開発本部・容器包装研究所と棟近教授の共同研究チームは、新缶容器の開発にあたり、“飲みやすさ”“注ぎやすさ”に関してお客様が感覚的に持っている感性イメージを、流入感、流出感、フィット感など14項目の評価用語に定義・分類し、つぎに、“飲みやすさ”“注ぎやすさ”に関わる缶容器の物理的な特性項目(注ぐ時の音、飲み口の面積、注ぎだし安定性、缶蓋表面のざらつき度など)を13項目挙げ、14項目の感性イメージと13項目の物理的特性を関連づける評価モデルを作成しました。

この評価モデルに基づき、“飲みやすさ”“注ぎやすさ”に関する感性イメージと相関関係の強い上位の物理的特性を同定し、その物理的特性に関して最適な新容器を開発しました。

上位の物理的特性の中でも、特に“飲み口の面積”(飲み口の縦・横の長さ)が重要であるという結果に基づき、従来品と飲み口の縦・横の長さが異なる9種類の缶蓋を作成し、100人規模の飲用モニター調査を経て、最終的に1000人規模の消費者調査を実施しました。この飲用モニター調査・消費者調査で最高の評価結果が出たものが、今回発売する『うまくち缶』です。

『うまくち缶』は、まず北海道工場(北海道札幌市)で製造する「アサヒスーパードライ」の缶500ml、缶350mlで4月上旬から展開を開始し、北海道地区で販売します。

5月からは北海道工場で製造するビール・発泡酒の缶500ml、缶350mlに品種拡大し、6月からは東日本にある3工場(福島工場、茨城工場、神奈川工場)、7月には名古屋、吹田、西宮の3工場、8月には四国、博多の2工場へと順次展開します。

※感性工学について
“感性工学”とは、人間が抱く商品に対する感性(イメージ・フィーリング)と商品の物理的特性との相関関係を明らかにし、その結果を工学的な商品設計に落とし込む手法です。

これまでに、早稲田大学理工学部棟近研究室の感性工学を用いた具体的な成果としては、テニスラケット・ゴルフクラブの打球感、かまぼこの味、リールの回転の良さなどの事例を扱い、一連の提案手法が使えるという感触を得ています。

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